単勝式馬券の傾向と対策

2004年当時の説明は次のようになっていました。

▲ＪＲＡの払戻金の説明

省略した図を文章で説明すると、次のような手順になります。

▲払戻金の計算方法

例えば、2003年の有馬記念の払戻金を計算してみましょう。

▲2003年有馬記念の単勝式投票金額

まず、（手順１）でＡの値を計算します。Ａの値は全投票金額の82%なので次のようになります。

（手順２）では、Ｂの値を計算します。Ａから勝馬に投票された金額を引き、その10％がＢになります。

Ｂの計算では小数が出てきますが、そのまま次の計算に用います。

（手順３）ではＣの値を計算します。Ａ－Ｂを、勝ち馬に投票された枚数（１枚の単位は10円）で割り、その結果がＣです。Ｃの計算では、小数点以下を切り捨てます。

最後に（手順４）でＣの値を10倍して払戻金を計算します。

なお、払戻金の最低額は100円になっていて、購入金額を下回らないようになっています。

　この計算結果から、2003年の有馬記念のレースにおける単勝式馬券の払戻金額は250円ということになりますが、実際の発表では260円になっています。

　この差額の10円が、特別給付金です。（当該レースの全投票金額の5％相当額）

Ｄは、全投票金額の５％を勝ち馬の枚数で割ったもので、小数点以下を切り捨てます。Ｄの10倍が特別給付金になります。

　本来は、全投票金額の５％である約73億円が的中者に払い戻されても良さそうですが、小数点以下は切り捨てられてしまうため、この有馬記念の場合は約45億円しか戻ってきません。

特別給付金は５％と言われていますが、単勝式の場合は、実際には３％程度なのです。

2009年1月現在では、日本中央競馬会（ＪＲＡ）から発売されている馬券の種類は、「単勝式（単勝）」、「複勝式（複勝）」、「枠番連勝（枠連）」、「馬番連勝（普通馬連）」、「ワイド（拡大馬連）」、「馬単」、「３連複」、「３連単」の８種類になります。 

 このうち「単勝式」という馬券は、１着になる馬を当てるという非常にシンプルでわかりやすい馬券です。 

単勝式の馬券を購入すると競走馬の馬名が印刷されるので、外れても記念品として持ち続ける人もいます。

ＪＲＡではありませんが、113連敗をした高知競馬の競走馬「ハルウララ」の単勝式馬券は、「走っても当たらない」ということで、交通安全のお守りにされたということもありました。

しかし、「単勝式」という馬券自体は、あまり人気のある馬券ではありません。

 ▲馬券売り上げの分布

 2008年における馬券の売り上げ状況は、上の表のようになっています。「単勝式」という馬券は、もっとも売れていない馬券で、全体の約４％という程度です。

1986年から2008年までの単勝式馬券の売り上げが、全体の馬券のうちどれくらいを占めているかを調べてみると、次のようになります。

▲単勝式馬券の年別構成比推移

1991年から「馬連」、1999年から「ワイド」、2002年から「馬単」、「３連複」、2004年から「３連単」という新馬券が発売されましたが、「単勝式」の馬券には、あまり影響がなかったようです。

「単勝式」の馬券は、毎年２～３％の売り上げ状況が続いていたのです。 

ギャンブルは不況に強いと言われていましたが、最近では競馬などの売り上げも減少しています。

ＪＲＡでも、1998年以降は馬券の売り上げが減少していますので、対応策に追われているようです。 

学生は馬券が買えないという法律を、20歳以上なら買えるように改正したり、高配当を期待できる魅力的な新馬券の開発を検討したり、薄暮競馬を実施したりと、様々な工夫を試みています。

2004年８月からは、札幌競馬場で「３連単」が先行発売されました。 

これからは、ますます馬券が複雑になりますので、かえって単純な単勝式馬券が見直されるようになるかもしれません。 

Part１

単勝式はどんな馬券？

目次 

 Part１単勝式はどんな馬券？ ・・・・・  １月４日

・単勝式馬券は約３％の売り上げ　　１月５日

・少しだけ有利な単勝式馬券　　　　１月６日

Part２　支持率の不思議 ・・・・・　１月8日

・単勝式馬券の支持率　　　　　　１月９日 

・単勝支持率と勝率　　　　　　　１月１０日

・単勝支持率と回収率　　　　　　１月１１日

Part３　支持率と予想オッズ ・・・・・33

・特別給付金は５％ではない　　　(34)

 ・単勝予想オッズと回収率　　　　(39)

・単勝人気と回収率　　　　　　　(42)

・頭数と単勝人気　　　　　　　　(46)

Part４　単勝式馬券の傾向（１）レース編　 ・・・・・49

・単勝式払戻金の年別推移　　　　(50)

・開催月と回収率　　　　　 　　 (60)

・開催競馬場と回収率　　　 　　 (62)

・レースの格と回収率　　　 　　 (64)

・重量と回収率　　　　　　 　　 (67)

・年齢別レースと回収率　　 　　 (71)

・条件別レースと回収率　　 　　 (74)

・レースの距離と回収率　　 　　 (76)

・馬場状態と回収率　　　　 　　 (78)

Part５　単勝式馬券の傾向（２）競走馬編　 ・・・・・81

・競走馬の回収率　　　　　　　　(82)

・種牡馬の回収率　　　　　 　　 (88)

・肌馬の回収率　　　　　　 　　 (95)

・母の父の回収率　　　　　 　　 (98)

Part６　単勝式馬券の傾向（３）騎手編　 ・・・・・103

・ＪＲＡの騎手の成績　　　　　 (104)

・外国人騎手の成績 　　　 　　 (112)

・地方騎手の成績　　　　 　　  (116)

・大穴騎手　　　　　　　　　　 (120)

・単勝オッズ別構成比 　　 　　 (122)

・障害レースのランク 　　 　　 (139)

Part７　単勝式馬券の傾向（４）調教師編　 ・・・・・143

・ＪＲＡの調教師の成績　　　　 (144)

・１番人気の成績　 　　　 　　 (148)

・大穴調教師                   (153)

・単勝オッズ別構成比 　　 　　 (154)

Ａｐｐｅｎｄｉｘ  参考データ　　・・・・・167

（１）種牡馬勝率・回収率　　  　 (168)

（２）騎手別勝率・回収率（平地）　 (173)

（３）騎手別勝率・回収率（障害）　 (188)

（４）調教師勝率・回収率　　　　 (192) 　

日本中央競馬会（ＪＲＡ）では、「単勝式」「複勝式」「枠連」「馬連」「ワイド」「馬単」「３連複」という７種類の馬券を発売していました。

不況には強いと言われていた競馬ですが、馬券全体の売り上げが減っています。このため、2004年８月から、かなりの高配当が期待できる「３連単」という馬券が発売されることになりました。

ますます馬券作戦が複雑になってきますので、１着馬だけを当てるというシンプルな「単勝式」馬券が見直されるようになるかもしれません。

馬券購入の際に、高配当を期待するのも良いでしょうが、的中率や回収率にも注目しておきたいです。現在のところ、以前の「特別給付金」にあたる上乗せ分の恩恵がありますから、「単勝式」の馬券が最も有利な馬券になっています。

いろいろな分野での情報化が進んでいますが、競馬の世界でも注目すべき動きがあります。株式会社ターフ・メディア・システム（TMS）という会社（現在はＪＲＡシステムサービス株式会社）が、2004年４月から競馬データ取得サービス「JRA-VAN Data Lab.」を開始したのです。 

月々1995円で1986年以降のＪＲＡ公式データや一部の地方競馬データ、国際競走データが入手できるようになりました。これらのデータを活用すれば、これまでにない馬券購入作戦が見つかるかもしれません。 

本ブログでは、この「JRA-VAN Data Lab.」からダウンロードした1986年１月から2008年12月末までの23年間の78,454レース、延べ競走馬総数1,000,369頭の競走成績を独自に分析したものです。 

特に騎手や調教師については、単勝式オッズの構成比によるランク付けを行い、勝率や回収率の数字と一緒に表示しました。これらは、馬券購入の際に迷った時には大いに参考になるでしょう。

なお、本書はイデア出版局が提案する投資型出版で制作しました。本作りを支援する人々からの資金を集めて出版するというシステムです。

本書では、競馬新書１「複勝オッズを見て３連複を買いましょう！」に引き続き、筆者の母の「高橋文」がスポンサーになってくれました。相変わらず痴呆気味の母ですが、２冊の本が売れれば、また元気な母に戻ってくれるのではと願っています。